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「凄いねぇは・・・」
「ん?」
4限が終わって三蔵が持ってきてくれたお弁当を食べていた時、一緒に昼食を食べていた光が妙にキラキラした目で話しかけてきた。
「だってさ、三蔵先輩って言ったら校内にファンクラブもあるくらい有名な人だよ?」
「んーそうみたいだね。」
「それに、成績優秀、眉目秀麗、有言実行・・・って数え切れないくらいの4文字熟語のエキスパート!」
「そだね。」
「先生達ですら頭が上がらないって人にあそこまでポンポン言えるの事、ほんっとに尊敬するよ!!」
・・・光って本当に面白いなぁ。
ほっといたら本気であたしの事、尊敬しそうだもん。
だからあたしの親友、やってられるんだろうけどさ。
あたしの席は廊下側で、光の席は窓側の一番後ろ。
いっつも光と一緒にお昼を食べるから、大抵日差しが当たって気持ちいい光の席でご飯を食べる。
あたしは三蔵が届けてくれたお弁当に入っていた卵焼きをフォークで突き刺して口に運びながら、何気なく窓の外に目をやった。
その時ふと視界に見知った人影が見えたから、その人物の名前をポロリと口にしてしまった。
「あ、三蔵。」
「え?どこ?」
それに反応した光が箸を置いて窓から身を乗り出してキョロキョロ見渡すけど・・・光、見てる方向違うって!
「そっちじゃなくて、あっちの・・・ほら!大きな木の下に・・・」
あまりに見当違いの方を見ていたので、あたしはフォークを持った手で三蔵のいる方角を示した。
そこまでやってようやく三蔵を見つけた光は、まるでクイズを解き終わったように晴れやかな顔をして席に座り直した。
「あっ本当だ。あんなに遠くなのに良く分かるね。」
「伊達に長年幼馴染やってるわけじゃないからね。」
昼休みに校内にいると余計な雑務を押し付けられるのが分かってるから、あーして人気の無い所で時間潰してるんだよね。
相変らず面倒な事、嫌いなんだなぁ。
口に入れた少し甘めの卵焼きをかみ締めながら、そのまま視線を木の下の三蔵に向ける。
物心ついた頃からずっと一緒にいた三蔵。
小さい頃は今よりもうちょっと愛想があって、時折笑うって言うより微笑む笑顔を見るのが嬉しくて・・・あたしは良くおかしな事をやって三蔵を笑わせてた、と言うより困らせてた。
そうすると三蔵は決まって「バカ」って言うけど、コツンと頭を小突く手は・・・言葉とは裏腹にすっごく優しかった。
近所の人も幼稚園の頃は三蔵の事女の子と間違えるくらい可愛かったのに、小学校高学年に上がった頃から急に背が伸び始めて、今迄三蔵の事を「可愛い」って言ってた友達が一転して「三蔵君ってカッコイイよね?」って言い始めた。
皆おかしいよ!三蔵は昔っからずーっと同じだよ?何処も変わってないよ?
友達にそう言うと決まってみんな「ちゃんはまだまだ子供だね」って言ってクスクス笑う。
確かに今なら分かるよ、他の人に比べて三蔵はダントツでかっこいい!って。
でも小さい頃から空気みたいに一緒にいるから・・・彼氏、とか恋人にしたいって言うのはちょっと分かんない。
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